宇都宮地方裁判所 昭和56年(ワ)373号 判決 1983年1月31日
主文
一 被告は、原告ら各自に対し、金二五八八万九九九四円及びこれに対する昭和五六年八月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その三を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告ら各自に対し、金一億円及びこれに対する昭和五六年八月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 訴外瓦井哲郎(以下「訴外人」という。)は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)によつて死亡した。
なお、訴外人はこの際、その所有者に属する後記事故車を損壊された。
(一) 発生時 昭和五四年一二月一五日午前八時一六分ころ
(二) 発生地 静岡県駿東郡小山町竹の下東名高速道路上り線東京起点七八・五キロポスト地先路上
(三) 事故車 普通乗用車(横浜五八ま四四七五)(以下「本件事故車」という。)
運転者 被告
(四) 被害者 訴外人(同乗中)
(五) 態様 本件事故車が前記場所を静岡方面から東京方面に向つて進行中、同車が路外に逸脱し、ガードレールに衝突したため、同車助手席に同乗していた訴外人が即死した。
2 本件事故は、本件事故車が東名高速道路追越し車線を静岡方面から東京方面へ向つて制限速度(時速八〇キロメートル)を大幅に上回る時速一〇〇ないし一二〇キロメートルで進行していた際、被告のハンドル操作の誤りにより路外へ逸脱し、ガードレールに衝突したものである。およそ高速走行中の自動車にあつては、一般走行時以上にハンドル操作のミス等は事故を招きやすいのであるから、本件事故車の運転者である被告としては制限速度を守り的確なハンドル操作をすべき注意義務があるのに、被告の前記走行はこれに違反しており、過失が存するので、民法七〇九条に基づき、本件事故により生じた訴外人らの損害を賠償する責任がある。
3(一)(1) 訴外人の逸失利益 金二億五六二八万二五〇五円
訴外人は、昭和五二年三月聖マリアンナ医科大学(以下「訴外大学」という。)を卒業し同年五月国家試験に合格した医師であり、昭和五四年六月からは、静岡県庵原郡蒲原町所在、共立蒲原総合病院(以下「訴外病院」という。)に勤務していた。同人は、事故当時三一歳の健康な成人男子であり、昭和六〇年一月からは自己の専攻である神経内科を開業独立する予定であつた。
訴外病院においては、昭和五四年六月から同年一一月までの給与賞与として訴外人に対し金三一二万九一六〇円を支払つていた。したがつて訴外人は、昭和五九年一二月までは少なくとも右金員を勤務月数で除した金五二万一五二六円(一円未満切り捨て。以下同じ。)を毎月得ることができたはずである。
また株式会社週刊日本医事新報社発行「日本医事新報」第二九二二号(昭和五五年四月二六日号)一〇七頁以下掲載の「昭和五一年五月実施の医療経済実態調査の概況」と題する中央社会保険医療協議会報告によれば、昭和五一年五月一箇月間の医業収支差額(医業収入から医業費用を控除したもの)は、その平均値で有床診療所につき金二〇六万円無床診療所につき金一五三万円であるから、一診療所あたりの平均月間医療収支差額は金一七九万五〇〇〇円である。訴外人は、昭和六〇年一月からは開業独立する予定であり、満六七歳になる昭和九〇年の年末までは稼働可能であるから、それまでの間少なくとも一箇月金一七九万五〇〇〇円の収入を得ることができたはずである。
他方生活費については、訴外人の如く所得の全体額の高い者においては毎月の収入の四割を超えず、また開業独立予定の昭和六〇年一月までには妻子を有しているはずである(生存していれば、この時三六歳である)から、これ以降は毎月の収入の三割を超ええない。
そうすると訴外人の得べかりし年間純利益は、昭和五五年一月から昭和五九年一二月までは合計金三七五万四九八七円、昭和六〇年一月から昭和九〇年一二月までは合計金一五〇七万八〇〇〇円であるから、それぞれを基礎とし、年五分の割合による中間利息を年毎ホフマン方式により控除して死亡による逸失利益の事故当時の現価を求めると合計金二億五六二八万二五〇円となる。
3754987×4.3643704=16388155
15078000×(20.27459395-4.36437041)=239894350
16388155+239894350=256282505
(2) 訴外人所有の本件事故車の損壊 金一二三万五五五三円
本件事故車は、訴外人が昭和五四年五月末価格合計金一三三万五三〇〇円で購入したものであるところ本件事故により全壊し、修理利用は全く不可能となつた。
ところで、昭和四〇年三月三一日大蔵省令一五号「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によれば、普通乗用自動車についての定額法減価償却においては、残存価額が購入価額の一〇パーセントで耐用年数六年、償却率年〇・一六六で計算することになつている。そこで、本件事故時における本件事故車の価額は次の金一二三万五五五三円になり、訴外人に対し同額の損害が生じた。
1335300-(1335300×0.9×0.166×6/12)=1235553
(3) 原告瓦井康介(以下「原告康介」という。)、原告瓦井光子(以下「原告光子」という。)は、訴外人の相続人の全部である両親として(1)、(2)の損害賠償請求権を各二分の一ずつ相続した。
(二) 葬儀費用 原告ら各自につき金二五万円
(三) 霊柩車費用 原告ら各自につき金四万二五〇〇円
本件においては訴外人の遺体が安置されていたのは神奈川県足柄上郡松田町であり、実家のある鹿沼市へ運搬するのに右費用が必要となつた。
(四) レツカークレーン費用 原告ら各自につき金二万九二五〇円
本件事故車を東名高速道路上から移動させるのに右費用を要した。
(五) 慰藉料 原告ら各自につき金五〇〇万円
訴外人は、原告らの間の四人の子供のうち唯一の男子であり、やつと一人前の医師として勤務するようになつたばかりであつた。原告康介も医師であるところから、将来の独立を含め、原告らの訴外人に対する期待は甚だ大であつたのである。このようにまさにこれからというときに瞬時にして同人を失つた原告らの精神的苦痛はあまりに大きく、それは原告ら各自につき金五〇〇万円をもつて慰藉されるべきである。
(六) 弁護士費用 原告ら各自につき金一〇〇万円
本件事故発生後損害賠償問題について原告らが交渉を申し入れたのに対し、被告は何の誠意も見せずこれに応じなかつたため、原告らは本件訴えの提起、追行を原告ら訴訟代理人に委任したが、その費用は金二〇万円が相当である。
したがつて原告ら各自金一〇〇万円である。
(七) 以上の損害額の合計は、原告ら各自につき金一億三五〇八万七七九円である。
(256282505+1235553+500000+85000+58500+10000000+2000000)×1/2=135080779
よつて原告らは各自被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、金一億三五〇八万七七九円の内各一億円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和五六年八月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合の遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実中、発生時、態様は否認するが、その余は認める。
2 同2の事実中、本件事故車が本件事故当時、時速約一一〇キロメートルで進行していたことは認めるが、その余は否認する。
3 同3の事実中、訴外人と原告らとの身分関係、訴外人が訴外大学を卒業し国家試験に合格した医師であり、昭和五四年六月から訴外病院に勤務したことのある三一歳の健康な男子であつたこと、本件事故車が訴外人の所有であり、本件事故により全壊したことは認めるが、その余の事実は争う。
三 抗弁
1 原告らは、昭和五五年五月一五日ころ、訴外人が加入していた自損事故保険から金一四〇〇万円、同搭乗者傷害保険から金八〇〇万円、合計金二二〇〇万円の支払いを受けた。
2 本件事故における訴外人と被告との関係は、いわゆる好意同乗などという程度のものではなくして、訴外人が前後の深酒と睡眠不足のため被告に運転を代つてもらつたという関係である。
すなわち、訴外人は、被告も勤務したことのある訴外病院から昭和五四年一二月一四日開かれる忘年会に招待されていたものの、同人は、日ごろから酒好きであつたがこのような会合に一人で出席することができない性格であつたため、かねて被告に対し一緒に行つて欲しい旨懇願し、もし被告が出席してくれなければ自分も出席しないとまでいうので、被告は訴外人と同行することを約していた。
そして訴外人と被告は、昭和五四年一二月一四日午後八時半ころから静岡県富士市内で開かれた忘年会、その後開かれた二次会、三次会に各出席し、被告は訴外病院内の宿舎に同月一五日午前二時ころ戻つたが、訴外人はその時未だ宿舎に戻つてはいなかつた。
訴外人と被告は、同日午前七時二〇分ころ起床し、朝食もとらずに駐車場に向かい、被告は、その途中訴外人から本件事故車の運転を依頼された。
ところで訴外人及び被告は、同日午前九時までに神奈川県川崎市内の訴外大学に行かなければならず急いでいたのであり、被告が本件事故当時時速一一〇キロメートルの高速度で自動車を運行することについては、訴外人も容認していたものである。また訴外人は、被告が本件事故車を運転して訴外病院を出発した直後から、本件事故車内で眠つていた。
以上のような事情の下では、仮に被告に損害賠償の責任があるとしても、その額については少なくとも五割以上減額されることが公平の観念に合致する。
3 原告らは、本件を解決するための協議に応じないので、被告は、昭和五五年五月一〇日原告らのために金三〇〇万円を弁済供託した。
四 抗弁に対する認否
抗弁3の事実は認めるが、その余の抗弁事実は否認する。
第三証拠〔略〕
理由
一 請求原因1の事実のうち発生時、態様を除いては当事者間に争いがない。そして成立に争いのない甲第一〇号証及び被告本人尋問の結果によると、本件事故発生時は昭和五四年一二月一五日午前八時一九分ころであることが、また成立に争いのない同第九号証、第一一号証、第一二号証、第一四号証、第一六号証、第一七号証、第二三号証、第二四号証及び被告本人尋問の結果によると、本件事故の態様は、本件事故車が本件事故発生地を静岡方面から東京方面に向つて進行中、同車が路外に逸脱し、道路左側の土手に激突した際ガードレールに衝突し、同乗者である訴外人が脳挫傷の傷害を受け、昭和五四年一二月一五日午前九時四五分神奈川県足柄上郡松田町所在神奈川県立足柄上病院において右傷害により死亡したというものであることがそれぞれ認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
二 次ぎに請求原因2の事実について判断するに、前記甲第九ないし第一二号証、第一四号証、第二三号証、第二四号証、成立に争いのない同第一三号証、第一九号証、第二〇号証の一、二、第二二号証及び被告本人尋問の結果によると、
1 被告は、本件事故発生時に本件事故発生地において本件事故車を運転するに際し、道路標識により指定された最高速度(八〇キロメートル毎時)を遵守するはもとより、当時左前方の走行車線を先行中の大型貨物自動車が、本件事故車の進行する追越車線に進路変更したのを約一一〇メートル前方に認めたのであるから、同車の動静を注視し、同車の速度と本件事故車との相互の間隔を勘案して適宜速度を調節しつつ追従し、急転把等による事故の発生を未然に防止すべき注意義務があつたこと、
2 ところが被告は、右義務を怠り、時速約一二〇キロメートルの高速度で疾走したうえ、前方の追越車線に進路変更した前記大型貨物自動車を認めながら、同車が加速進行して行くものと軽信して、同車の動静を十分注視せず、制動操作不十分のまま漫然約二〇〇メートル進行し、同車の約一九メートル後方に接近して初めて危険を感じ、左に急転把した過失があつたこと、
3 これにより被告は、前記認定の態様の本件事故を発生させたものであり、不法行為者としての責任があること、
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
三1(一)(1) 訴外人が訴外大学を卒業し国家試験に合格した医師であり、昭和五四年六月から訴外病院に勤務したことのある三一歳の健康な男子であつたことについては、当事者間に争いがない。
(2) ところで成立に争いのない甲第三号証、第一八号証及び被告本人尋問の結果によると、
ア 訴外人は、昭和五四年六月から同年一一月まで訴外病院に勤務した後、本件事故当時は訴外大学大学院課程に在学しており、早くとも昭和五八年三月末までは在学する予定であつたこと、
イ 右在学中は、非常勤医師として一箇月当たり金二万八五〇〇円を超えない収入があつたこと、
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(3) 右事実によれば、
ア 昭和五五年一月から昭和五八年三月まで(三・二五年間)の逸失利益は、前記金二万八五〇〇円を基礎に生活費の割合を四〇パーセントとしてライプニツツ式計算法により年五分の中間利息を控除して本件事故当時の現価を算定すると、金六〇万一七九〇円、
イ 昭和五八年四月から昭和九〇年九月(六七歳)まで(三二・五年間)の逸失利益は、昭和五六年賃金センサス第三巻第三表医師(男)、企業規模計、全年齢平均賃金年間合計九四〇万五七〇〇円を基礎とし、生活費としてその三五パーセントを要するものとしてライプニツツ式計算法によつて年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価を算定すると金八二九七万三九八一円、
となる。
なお原告は、訴外人逸失利益算出にあたつては、訴外人の訴外病院勤務中の支払賃金(前記甲第三号証、成立に争いのない同第四号証)及び日本医事新報掲載にかかる記事(成立に争いのない同第八号証)の内容を基礎とすべき旨主張するところ、前者は前記のような短期間の勤務を前提として決定された賃金であり、また後者は昭和五一年五月の一箇月間の実態調査に基づくものにすぎず、しかも医業費用として建物、医療機械などの減価償却費、薬品などの資産減耗損の調査が行われていないため計上控除されてはいないこと、さらに現在及び将来の医療経済情勢からすると、右金額のみを基礎として算定するのは、合理性を欠くもので、仮に訴外人が将来において開業医となるとしても、いずれも採用できない。
(4) 以上によれば、訴外人の死亡による逸失利益の合計は、金八三五七万五七七一円である。
601790+82973981=83575771
(二) 本件事故車が訴外人の所有であり、本件事故により全壊したことは、当事者間に争いがない。
そして成立に争いのない乙第五号証の一ないし三によると、本件事故車(成立に争いのない甲第五号証によると、ホンダアコード一八〇〇ハツチバツクLX―五昭和五四年型(エアコン取付済)であることが認められる。)と同車種の昭和五五年一月における中古車市場における平均販売価格は金八九万五〇〇〇円であることが認められるから、右価格をもつて本件事故車全壊による損害金と解するのが相当である。
(三) 相続
原告らと訴外人との身分関係については当事者間に争いがないので、原告らは各自、右損害賠償請求権の二分の一ずつを相続したことになる。
2 本件における葬儀費用は、弁論の全趣旨によれば原告らと訴外人との身分関係、職業等を考慮して、原告ら各自につき金二五万円と解するのが相当である。
3 霊柩車費用
成立に争いのない甲第一八号証、弁論の全趣旨によつて真正に成立したと認められる同第七号証及び弁論の全趣旨によれば、訴外人の遺体を運搬するにつき原告らがその費用として八万五〇〇〇円を支出し、各自その二分の一を負担したものと認められ、右は本件事故発生場所等からして本件事故と相当因果関係のある損害と解される。
4 レツカークレーン費用
弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる甲第六号証及び弁論の全趣旨によれば、全壊した本件車両を東名高速道路上から移動させるのに原告らがその費用として五万八五〇〇円を支出し、各自その二分の一を負担したものと認められ、右も本件事故と相当因果関係のある損害と解される。
5 訴外人は、原告らの間の唯一の男子であり、国家試験に合格した医師であることは、当事者間に争いがない。弁論の全趣旨によればその将来を楽しみにしていた訴外人を本件事故で失つた原告らの失望落胆は推測に難くないところであるから、原告らに対する慰藉料は、各自金四〇〇万円が相当である。
6 以上1ないし5によれば、原告ら各自につき金四六五五万七一三五円となる。
(83575771+895000)×1/2+250000+42500+29250+4000000=46557135
四1 成立に争いのない乙第六号証の一ないし三によると、原告らは、昭和五五年五月ころ訴外人が加入していた自損事故保険から金一四〇〇万円、同搭乗者傷害保険から金八〇〇万円、合計金二二〇〇万円の支払いを受け、各自その二分の一を受領したことが認められるので、これを前記認定額から減ずる。
2 ところで前記甲第二二ないし第二四号証及び被告本人尋問の結果によると、
(一) 訴外人は、訴外病院の忘年会に招待されていたが、一人で出席することをためらい、同病院に臨床トレーニングのため派遣された経験のある被告に対し同行を求めたこと、
(二) 被告はやむなくこれに応じ両名は昭和五四年一二月一四日午後四時半ころ訴外人が運転する同人所有の本件事故車で神奈川県川崎市所在の訴外大学を出発したこと、
(三) 忘年会は静岡県富士市内で同日午後六時ころから行われたが、両名は午後七時ころから出席し、その後同市吉原での二次会に午後八時半ころから午後一一時ころまで、次いで富士駅前での三次会に翌一五日午前〇時半ころまで各出席したこと、
(四) その後被告は同月一五日午前二時ころ訴外病院の宿舎に戻り就寝したが、訴外人は被告と共には宿舎に戻らなかつたこと、
(五) 両名は同月一五日午前九時までに訴外大学に行く予定で同日午前七時二〇分ころ起床し、朝食もとらず急いで訴外病院の宿舎を出発したこと、
(六) 訴外人は前夜の睡眠不足のため、帰路の運転を被告に依頼したこと、
(七) 被告は、訴外大学に予定時刻までに到着できるよう東名高速道路においては制限速度を超える高速度で運転を継続したこと、
以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
そして右認定事実によれば、訴外人は、被告が本件事故車を運転することはもちろん、予定時刻に訴外大学に到着するためには制限速度を超える速度で進行しなければならないことを容認していたものと推認できる。また、訴外人は、本件事故車の運行利益を享有していたのであり、以上のように同人の本件事故車の運行との関わりないし地位に鑑みれば、本件損害の三割を減額するのが相当である。
3 また被告が、昭和五五年五月一〇日原告らのために、金三〇〇〇万円を弁済供託した事実については、当事者間に争いがない。
しかしながら右供託額は後記認定のとおり本件債権額の一部にすぎず、特段の事由のないかぎり右部分についても供託の効力を生じないものというべきである(原告らが右供託の還付を受けた等の事実については、主張立証がない。)。
4 以上1ないし3によれば、原告ら各自につき金二四八八万九九九四円となる。
(46557135-2200×1/2)×(1-0.3)=24889994
五 本件事案の内容、審理の経過及び認容額に照らすと被告に対して本件事故による損害として賠償を求めることができる弁護士費用の額は、原告ら各自につき金一〇〇万円を相当と認める。
六 以上の事実によれば、原告らの本訴請求は、原告ら各自につき金二五八八万九九九四円及び訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな昭和五六年八月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 北澤章郎)